COLUMN 社長コラム

給料が上がらない国?

2022.07.31

給与の話題でマスコミが騒いでいます。アメリカや欧州、新興国は給与が上がっているのに、日本は30年間全く給与が上がっていないのは異常だという論調です。MMT理論を掲げ国債を今以上に発行して国民に給付すべきだと主張する政党も現れています。

国債を発行して現金給付を国民に行っても豊かな国にはなりません。市場に流通する紙幣の量(マネーサプライ)が増えるだけで物の生産量は変らないのでインフレが進みます。アメリカの9%を超える異常なインフレはこの無謀の政策の結果起きたものです。

簡単なイメージを言うと1人が持っているお金の量が100円から300円に増えたけど、店に売っているりんごの数は1個(100円)のままなので、お金を急に持って買える人が増えたりんごは不足し、価格が300円になって需給バランスが調整されます。

これは住宅業界においても同じことが起きているので分かりやすいのではないかと思います。金利が下がって多くの人が住宅ローンを組めるようになったが、人気地区の土地は増えないので価格が上がったという事です。

この需給バランスの調整が起きないようにするためには、生産性を向上させる以外方法はありません。

農家が今までのりんご1個分のコストで3個生産してスーパーに並べればよいわけです。言うのは簡単ですが、実際は難しい問題です。

同じ品質のものを同じコストで3個生産すると高確率で歪が生じます。その一番の歪が人件費の抑制と品質の低下となります。豊作だとりんごの買取価格を農協やスーパーが下げるので農家の収入は増えず、間接的な人件費の抑制となります。農家は対価が増えないので品質を維持する努力をやめてしまいます。現場仕事は人気が無いので優秀な若い就業者もなかなか入って来ません。

この悪循環が繰り返されるといずれ「労働者の喪失」が起こります。つまり誰も作らなくなるという事です。当然物価は高騰します。

現実問題としてこのまま無策でいくと10年後には高齢化した米農家の一斉の労働者喪失が起こる可能性が高く、日本は米の生産もまともにできなくなると思います。農水省は分かっているはずですが、具体的な策を打ち出せないでいます。

住宅業界も他の業界と同様に「労働者の喪失」が段々深刻になってきました。依頼をする職人の高齢化が進み、現場職を希望する新規就業者が殆ど入って来ない状況です。需給バランスが崩れているので職人への発注単価が上昇しています。購入者にとっては価格上昇でマイナスですが、多くの人が敬遠する現場仕事を頑張って続けてきた職人にとっては良かったのかもしれません。

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